はじめての虫歯
19歳にして、初めて虫歯になった。
小、中、高校では、歯科検診のたびに先生から「きれいに磨けてますよ。」と言われてきた。
虫歯がないのが当たり前だった。
私は痛いのが大嫌いなので、虫歯にならないように歯磨きはきちんとしていた。
夜、歯を磨くときは必ず手鏡を使う。
これだけは、昔から習慣にしていた。
しかし、この秋冬は、ある事情により極度にストレスを感じてしまい、あまり好きでもないのに甘いお菓子を食べまくって、気を紛らわしていた。
おまけに、なかなか自分の時間がとれないため、手鏡を使っての歯磨きも疎かにしてしまっていた。
そして、そのツケがまわってきた。
つい数週間前、奥歯に黒い点を見つけてしまった。
歯を磨いても、汚れはとれない。
その時、絶望感でいっぱいになった。
「痛くなったらどうしよう。」
「もし歯が抜けてしまったらどうしよう。」
「まだ10代なのに入れ歯なんか嫌だ」
など、心配性の上、メンタルの弱すぎる私は、初めての虫歯に恐怖心ばかり持っていた。
歯医者に行くまでの数週間、ずっと気が重かった。
そして今日、意を決して歯医者に行ってきた。
待合室にいるときから、妙に落ち着かなかった。
悪いことばかり頭に浮かぶ。
自分の名前が呼ばれ、部屋に入る時、緊張感が絶頂だった。
先生に見てもらったところ、
「よく見つけたね。これならすぐ治るよ。痛くないからね。」と言ってもらい、全身の力が抜けた。
実際、治療もすぐに終わった。痛みなんて何一つなかった。
おまけに、虫歯のあったはずの奥歯を見ても、何一つ跡が残っていなかった。
初期虫歯でよかった…。そう思った。
治療後、心配のあまり「他の歯は大丈夫ですか?」と聞いてみたところ、「大丈夫ですよ。きれいに磨けています。」と先生が言ってくれたため、数週間に渡る絶望感がようやく消えた。
これから、たとえどんなに忙しくても、歯はちゃんと手鏡を使って磨く。
そして、しばらくは甘いものは厳禁。
もう、こんな気持ちになるのは懲り懲りだ。
そう痛感した今日だった。
初めての虫歯が、最後の虫歯治療になることを祈りたい。